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言葉で聞かせて

第13章 言葉で聞かせて



挑発的なエリカさんの物言いに対抗するように笑顔を浮かべた


作り笑いには自信がある
これでずっと生きてきたんだから


『……ありがとうございます。嬉しいです。とても』
『ふふふっ……私も、嬉しいわ』



それから新居の準備は出来てる、とか
結婚式はいつにしようか、とか
その前に両親に会ってもらわなきゃ、とか

色んなことを聞かされた


全て聞き終えてみれば、僕の行動はもうエリカさんに仕組まれていたんだってことがわかる

僕のことを全部調べて1番弱いところがどこかわかった上で、そこを的確に突いてきてたんだ

外堀まで綺麗に埋めて


猛獣に追われるウサギの気分だ



エリカさんを前にして過去の記憶を思い出していた僕を、エリカさんが呼び戻した


「ねぇ悠史?聞いてるの?」
「……えぇ」


エリカさんはその美しい顔に似合わない舌打ちをして立ち上がった


「興醒めよ。今日はもういいわ」
「……」


そう言い捨てると、着替えを掻っ攫ってエリカさんは部屋を出て行った


助かった……かな


自分の身体の疼きは治らないままだったけれど、嘘だとわかったエリカさんの妊娠を真実にすることは何とか防げたらしい

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