テキストサイズ

言葉で聞かせて

第13章 言葉で聞かせて

敦史目線


すぐ近くにいるのに手が出せない
きっと今行ったところで悠史は俺を拒絶する


どうせあの女が脅してんだろ


とは思うが、俺が少し探ったところで大した情報は手に入らなかった

やはり協力してくれると言ってくれた三崎さんや佐伯さん達の情報を待つしかない

それでも何かしなければ、と俺は明らかに悠史の態度が変わったところを考えた


やっぱあん時、だよな
あの女が店に来た時

くそ
俺が目離さなけりゃな
あの客のせいだ……

って、別にあいつのせいじゃねぇか


「はぁ……」


俺がため息をつくと、久しぶりの休みに昼食を作ってくれていた千秋が心配そうに俺の顔を覗き込んだ


「お疲れですね」
「あ?あぁ……そうだな」


俺が何も言わないことで言いたくないことを悟ったのか千秋が困った顔をしてキッチンに戻っていく

その態度に腹がたった


千秋は、あれ以降1度も泣いてない
いつも通り俺に接してる

けど時折見せる辛そうな顔が、俺には心臓を握りつぶされるより苦痛だった


お前が1番辛いんじゃねぇのかよ

ヘラヘラ笑うな
泣けよ

ちゃんと泣いて、帰ってきて欲しいって言えよ


俺が、悠史と代わってやれたらいいのに

ストーリーメニュー

TOPTOPへ