
言葉で聞かせて
第13章 言葉で聞かせて
いや、あり得るよな
あの女が金を使う先なんてのは目に見えてる
むしろブランドになんか金使う暇もないほどだろうよ
「そうだな。億単位で使う先なんてそうそうないよな」
「ね〜どっかの男に貢いでんのかしら」
客の女の話を聞き流しながら、俺の意識は別のところにあった
ようやく見つけた
エリカの弱点
「流星さん、ご指名です」
「あぁ」
悠史に似ている俺の顔にしか興味のない女は俺が席を立つ時も特に渋ったりせず、「またね」と手を振る
俺は情報提供の感謝の意を示すために、そいつの足元に跪いて手の甲にキスを落とした
「またな」
「……っ」
最後に笑ってやれば、女は顔を真っ赤にしながら喜んでくれた
本当、感謝してるぜ
三崎さんにも報告しないとな
俺は終業時間の計算をするために時計に目を向けた
仕事が終わると、俺は再び事務所に足を向けた
監視カメラの映像を見せてもらう約束もそうなんだが、今日のあの話を三崎さんにしないといけないから
「失礼します」
「あぁ、来たか」
「お疲れ、敦史」
「佐伯さんも、お疲れ様です」
三崎さんだけだと思っていた事務所には佐伯さんの姿もある
特に聞かれてまずい相手でもない
というか聞いてもらわないといけないから、俺は佐伯さんにも目を向けながら話し出した
