
言葉で聞かせて
第13章 言葉で聞かせて
ちゃんと見てやれ
千秋はメンタルが弱い
俺は自宅への帰路を歩きながら三崎さんの言葉をもう一度考えていた
千秋は強くなった
俺たちのことに関してはより強さを発揮できる
と、思う
自惚れじゃねぇと思いたい
悠史のこと話そう
あの行動が本心なんかじゃないってわかったんだからな
泣いていた千秋が脳裏に浮かんできて決意が鈍ったが
「はぁ……」
自分の弱い気持ちを吐き出して夜の空気に溶かすと、少し気持ちが落ち着いた
マンションが見えて、俺たちの部屋の灯りも確認できる
ちゃんといるな、なんて上を向きながら当たり前のこと確認していたから気がつかなかった
俺の前から歩いてきていた人影のこと
そいつは俺がエントランスに入ろうとした時に声をかけてきた
「あら?敦史じゃない」
「あ?……!」
「お仕事今終わったの?お疲れ様」
クソ女
俺たちと同じマンションに住んでるっつーのは嘘じゃなかったのか
いい趣味してんな
「悠史がいなくなったら敦史の指名増えたでしょう?」
「……そうだな」
「ごめんなさい。仕事辞めさせて。でもほら、自分の夫が他の女の人に媚びてるのを見るのなんて嫌でしょう?」
知らねぇよ
