
言葉で聞かせて
第13章 言葉で聞かせて
俺が苛ついているのがわかってんのかわかってねぇのか、エリカはくるくる表情を変えながら楽しそうに話している
まともに返事してもいねぇのによく話すな
とっとと帰りてぇ
けど
「……悠史は元気か?」
「!」
俺が問うとエリカは見目見開いて驚いたような顔をした
そして一瞬後には微笑ましい兄弟を見ているかのような顔で微笑む
「元気よ。当然でしょう?最愛の人に酷いことするなんてあるわけないわ」
「……そうか」
俺が返事をすると俺の視線から逃れるように目を腕時計に向けたエリカが
「あら、もうこんな時間。早く帰らないと悠史が心配するから。またね、敦史」
「あぁ。悠史によろしくな」
「えぇ」
と言ってエントランスに入っていった
結局は同じエレベーターに乗るはずなんだが、まぁいい
俺だってあいつとこれ以上同じところにいたくねぇ
陽が落ちて冷えた空気を肺に取り込めば、怒りで温まった身体が冷めていく
あのクソ女
何しやがったんだ
エリカは『酷いことするわけない』と言った
俺は風邪なんか引いてないかって意味で元気かって聞いたんだよ
なのにあんなこと言うって
「はぁ……」
