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言葉で聞かせて

第13章 言葉で聞かせて


俺が話し終えると、千秋はその大きな目いっぱいに溜めていた涙をぽろぽろと流した


「……ぅ、く……よかっ、た……僕、嫌われた、と……思っ……」
「早くに言わなくて悪かったな。大丈夫だ。あいつはちゃんと千秋のこと好きだよ」
「は、ぃい……」


嬉しそうに泣き続ける千秋に少し笑って「こっちに来い」と千秋を呼び寄せる

俺は立ち上がって俺の方に来た千秋を優しく抱き締めた


悠史がしてやるように


背中を優しく撫でて、子供にするように叩く


「我慢してたよな」
「……く、ぅ……ん……っ」
「偉かったな」


俺の胸に顔を摺り寄せる千秋を微笑ましく思う一方、俺は千秋が今誰に抱きしめられているのか考えていた


「ごめ……なさぃ……明日もお仕事なのに……こんな……」
「何も話さなかった俺が悪いんだから気にすんな。泣きたいだけ泣いてろ」


一瞬身体を離した千秋をもう一度抱き寄せようとすると、首を振って拒絶される


「もう、大丈夫です。心配事はないんだってわかったら泣く必要なんてありませんから」


千秋はそう言って笑った

その笑顔が本心からのものだとわかって、俺も笑いながら頭を撫でてやる


強くなったな

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