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言葉で聞かせて

第13章 言葉で聞かせて


千秋にちゃんと話せたことで気が抜けて珍しく酔っているのか、部屋に戻るためにサッシを跨ごうとした時や廊下を歩いている時に何度かよろける


やべ
頭ぐらぐらするわ


所々で壁に手をつきながら進み、何とか自分の部屋に入った


「ふぁ……ぁ」


ねみぃな


大きなあくびをしながら千秋の隣に身体を滑り込ませる

すると隣から寝言が聞こえてきた


「……き…………ゆ、し……」
「?」


気になって身体を起こし口元に耳を寄せてみると、千秋が言っていたことが聞き取れるようになる


「ゆうしさん…………すき、てす……」


寝ぼけて言っていて濁音は発音出来ていなかったが、それでも十分だった


『悠史さん好きです』


千秋はうわごとのように何度もその言葉を繰り返していた


「……っ」


それを聞いた時の俺の気持ちを、誰が理解できるだろう?

後頭部を殴られたような衝撃
胸に鉛を落とされたような感覚
身体中を針で刺されたような痛み


違う

どれも違う


俺の心に浮かび上がったのは
自分でも恐ろしいほどの


破壊衝動だった




俺がどんなに思っても、千秋は悠史しか見ていない
悠史も、千秋しか見ていない

なら、邪魔者は俺一人じゃないか


なら


全部壊してしまえ

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