
言葉で聞かせて
第13章 言葉で聞かせて
開かれた扉の向こうに立っていたのは、良く知った顔だった
「!!!」
「待たせたな」
待ち焦がれた救済の手
あぁ
やっぱり僕は千秋さんが好きで、エリカさんと結婚するなんて出来るわけなかったんだ
だってこんなに喜んでる
けど、どこか喜びきれなかった
助けに来たその人はずっと共に生きてきた僕の半身
敦史
じゃなかったから
「三崎……さん……?」
扉を開いたのは退職届を出したはずのお店の店長だった
「遅くなって悪かった」
滅多に見せない笑顔は、僕を満足させるためだったのか僕が無事だったことに喜んでくれているのか
どっちにしても、身体の力が抜ける
「おい。こっちに来い」
「きゃっ、痛……」
三崎さんが腕を前に振ると、その手で掴んでいたらしいエリカさんが部屋の床に転がった
「何なのよ……っ、もう……」
エリカさんは涙目になっているけど、同情の気持ちも浮かんでこない
自業自得、だね
今回ばっかりはフォローのしようもない
恐喝、監禁
普通に考えて犯罪だもんね
僕が身体を起こしてベッドに座ると、三崎さんがエリカさんに紙を1枚突きつけた
「これ見ろ」
「!!」
なに?
目を凝らしてみたけれど、字が細かくて僕のところからじゃ何の紙なのかわからない
