
言葉で聞かせて
第13章 言葉で聞かせて
セイジくん?
「……あの医者が、どうした」
医者、ってことは
長野さんのことかな
「誠二くんはお金で買ったりしてない!!」
突然院長を庇い出したエリカさんに、三崎さんが冷たい声を発した
「そりゃあ問題だな?脅されてたんならまだしも、積極的に文書偽造なんてしてんならそれは立派な共犯者じゃねぇか」
「!!」
庇おうとしたつもりが結局長野さんの立場を怪しくする事になってしまった
そのことに気がついたエリカさんが三崎さんの脚に縋り付く
「違っ……違うの……誠二くんは悪くないのっ…………やめて……やめて下さ……私はどんな罰でも受けるから……っ誠二くんは、見逃してくださ……い……」
がくがくと震えながら三崎さんにしがみついているエリカさんを見下ろす三崎さんの目には何の感情も宿っていない
エリカさんがこんなに必死になるなんて
長野さんとどういう関係なんだろう
僕を相手にした時の余裕な表情が目に浮かぶ
僕に対してよりずっと必死じゃないか
ほっ、と息をついたその時、三崎さんが手に持っていたタバコを脚にしがみついているエリカさんの上に落とした
「あっ……」
流石に驚いて声を上げると、そのタバコはエリカさんの上に落ちる前に横から伸びてきた手によって握り潰された
