
言葉で聞かせて
第13章 言葉で聞かせて
タバコの火を手で握りつぶしたにも関わらず、顔色一つ変えないその人物は
「誠二……くん……」
長野さんだった
エリカさんに微笑みかけた長野さんは僕の方に身体を向けると、深く頭をさげる
「!」
「本当に、申し訳ありませんでした」
三崎さんがした舌打ちが静まった部屋に響く
「謝って済むなんて、思ってねぇだろ?」
三崎さんに声をかけられて長野さんが顔を上げた
「もちろん、きちんと記者会見を開きます」
そう言うと長野さんの視線はまだ床に座り込んで放心しているエリカさんに向く
「ーーー二人で」
その言葉にようやく現実を理解できた様子のエリカさんが「えっ……ぁ……」と声を出した
「誠二くん、どうしてここに……?」
「エリカさん」
長野さんがエリカさんの傍にしゃがむ
「ごめんなさい。勝手にこんなことをして」
「そんな……でも、こんなことしたら誠二くんが……」
「いいんです。病院は、もう別の人間に任せてきましたから」
「……誠二くん…………ごめんなさい…………」
縋り付くエリカさんに、それを支える長野さん
うぅ、ん……
この状況を誰か説明して……
