
言葉で聞かせて
第13章 言葉で聞かせて
始まってしまった二人の世界にどうすることも出来ず、僕は黙っているしかない
すると
「チッ、おい」
三崎さんの舌打ちで戻ってきたエリカさんと長野さんは、気まづそうに離れた
そうして照れる様子はカップルにしか見えない
僕はどうしてエリカさんにあんなに執着されてたんだろう
会社からお金をとって
嘘の診断書を書かせて
長野さんを巻き込みたくないなら、診断書なんてお願いするべきじゃない……けど
だめだ
眠すぎて頭が回らない
「おい、悠史?」
「悠史……?」
三崎さんとエリカさんが僕の名前を呼んでいるけど、僕は安心感と疲労感で限界で
名前を呼ばれた記憶を最後に意識は深い闇へと落ちていった
「……ぅ……」
目を覚ますと、誰もいない部屋に一人で眠っていた
エリカさんと僕の新居だと言われて与えられた部屋
もしかして、夢……?
久しぶりにゆっくりと眠ってすっきりした頭で記憶を辿りながら身体を起こすと、いつもある重みがないこと気がつく
手が……繋がれてない
僕を戒めていた手枷が寝ている間に解かれていた
現実、だった
ちゃんと
「良かった……」
ほっと息を吐いていると、部屋の扉が開く
そこに立っていたのは長野さんだった
「起きられましたか。お身体は?」
「多分、大丈夫です」
「そうですか。……リビングで2人がお待ちしていますよ」
三崎さんもエリカさんも、リビングに……
「わかりました」
