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言葉で聞かせて

第13章 言葉で聞かせて


「……それで、診断書を偽造したんですね」
「はい」


長野さんが真っ直ぐな目で僕を見る

この人は本当にエリカさんのことが好きだったんだな、とわかる目だ


「それで?そこでさっきからメソメソうるさい女はそろそろ理由を話せるようになったのか?」


三崎さんが視線でエリカさんを指しながら言うと、しゃっくりのおさまったエリカさんが堰き止めていた思いがそこから溢れるように口を開けた


「私……っ、私も……誠二くんが好きで……でも、誠二くんは私のことを嫌いだと思っててっ……それで、我儘も言ってみたし、浮気……みたいなこともした、けど……っ」


しゃっくりのせいではなくて、自分の言葉が上手く繋がらない
そんな風に一生懸命話をするエリカさんの背中を長野さんは優しく摩っている


「誠二くんには、意味なくて……だから、せめて……他の人と結婚して誠二くんを自由にしてあげようって、思って…………」


それで選ばれたのが、僕
だったってことなのかな


随分簡単な理由だなぁ、と考えていると取り繕うようにエリカさんが言う


「でもっ、悠史のことは本当に好きだったの……こんな私にも、優しくしてくれて……本当に、好きだった……自分のものにしたいっていうのも、本当……だった……」

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