
言葉で聞かせて
第13章 言葉で聞かせて
「ごめんなさい」と尻すぼみになっていくエリカさんの言葉に、嘘は混じっていないみたいだ
好き、とか
わからなくなる
僕にとっては千秋さんも敦史も大切だけど
じゃあその違いはって聞かれたら……
違い、は……?
なんなんだろう
千秋さんと敦史に対する好きと
姉さんとか博秋さんや他のみんなに対する好きは何か違う
それはわかる
でも、千秋さんと敦史の違いはなんだろう
僕が考えに耽っていて目の前のことが見えていないのを見て、三崎さんが大きなため息をついた
「悠史」
「あ、はい……すみません……」
あ、三崎さんの顔が呆れてる
ごめんなさい
「ちゃんと、公の場で言うんだろ?お前らのした偽造やら、金やら」
「えぇ、もちろんです」
「はい……」
頷いた2人を見て三崎さんが立ち上がった
もう今日はこれで終わりってことなのだろう
「帰るぞ、悠史」
「はい」
「ぁ……っ、待って!」
「?」
三崎さんに促されて立ち上がった僕をエリカさんが止める
「あの……本当に、ごめんなさい……」
エリカさんが立ち上がって、深く頭を下げた
それを見て隣の長野さんも同じく頭をさげる
「きーーー」
結局何もなく千秋さんと敦史のもとに帰れるんだし「気にしないで」と言おうとした僕の言葉は三崎さんの手で遮られた
