テキストサイズ

言葉で聞かせて

第13章 言葉で聞かせて


「わかっているとは思うが、このまま何もなく済むと思うなよ。会社にだけじゃなくウチの店やこいつにもちゃんと損害賠償支払ってもらうからな」


さっき再会してから三崎さんはずっと無口だったけど、それはいつもの無感情によるものじゃなくて怒りによるものだったのか


「三崎さん……」


僕が名前を呼ぶと、三崎さんは今日何度目ともつかない舌打ちをする


「金持ちのお遊びに付き合ってやったわけじゃねぇんだよ。……人を傷つけるってのは、簡単な覚悟でやるものじゃない」
「……」


僕には、三崎さんのその言葉に返す言葉も見当たらず、黙って部屋を後にする三崎さんについて出て行くしかなかった



マンションの部屋を出てエレベーターに乗ると、三崎さんが押したボタンは1階だった

エントランスに誰かいるんだろうか


エレベーターが到着してエントランスに足を踏み入れると、そこで待っていたのはマンションという庶民的な場所が似合わないほど華やかな1人の男性だった


「佐伯さん……」
「久しぶりだね、悠史」


にこにこと微笑みながら僕に手を振る佐伯さんの手には車のキーが握られていて、三崎さんをここまで送ってきたんだとわかる

ストーリーメニュー

TOPTOPへ