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言葉で聞かせて

第13章 言葉で聞かせて


佐伯さんは会って早々に「ご迷惑おかけしました」と深く頭を下げた僕の後頭部を軽く叩いた

頭を上げると、佐伯さんはゆっくりと語る


「いいんだよ。大切な人間を傷つけられた時の悲しみは、何にも変えられないからね。もちろん、傷つけられた側も傷つけた側もだろうけど。……ご飯も食べれず、眠れず、セッ……痛っ」


後半泣き真似をしながら言っていた佐伯さんの頭を三崎さんが殴る


グーだった
本当に痛そう


「まぁとにかく、良かったよ。ちゃんと無事で」
「はい。ありがとうございました」


再び軽く頭をさげると「律儀だね」と佐伯さんに笑われる


「後の話は後日でいい。とにかく今は……いるだろ。話さなきゃいけない人間が」
「!」
「ママ……痛っ……」


そうだ
千秋さんと敦史のもとへ早く帰らなきゃ


「お前があいつらのところを離れた事情は、本人たちも知ってる。……安心して帰れ。じゃあな」


そう言うと踵を返して歩き出してしまった三崎さんを追って、佐伯さんもひらりと手を振って歩き出す


「本当に、ありがとうございました」


最後にもう一度頭を下げて、エントランスから2人の影がなくなるのを見送った

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