
言葉で聞かせて
第13章 言葉で聞かせて
2人を見送るのを終えて、すぐに踵を返した僕はエレベーターの呼び出しボタンを押した
僕と三崎さんが下りてきたエレベーターがまだ1階に止まったままになっていて、すぐに扉が開く
階の指定ボタンを押してエレベーターが動き出すと、脱力したように壁に寄りかかった
緊張……する
さっきまでエリカさんとの修羅場を迎えてたなんて思えない
……同じ建物にいたなんて、思えない
動いていたエレベーターが止まって、扉が開いた
一歩一歩家に近づくに連れて心臓の音が大きくなって、目も熱くなっていく
家にいる、よね
千秋さんは確実だけど
三崎さんのあの言い方だと敦史も、お店にいるわけじゃないんだろうか
部屋の前に来て、鍵を持っていないことに気がついてはっとする
あ
エリカさんの部屋から何も持ってきてない
携帯や財布も置いてきてしまった
携帯は変えてしまえばいいし、財布には大したものは入っていないからいいのだけど
他の荷物も全部あの部屋だ
まぁ、買い換えてもいいかな、と思い直して今はとにかく目の前のことに集中する
インターフォンを鳴らすと、音が静かに部屋の中に響いた
緊張がぶり返してきて僕を襲う
敦史にまた1発ぐらい殴られるのも、覚悟していた
