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言葉で聞かせて

第13章 言葉で聞かせて


プツ、と向こう側が受話器を取った音がした


『……』


だけど、いつまで待ってもスピーカーから敦史や千秋さんの声が聞こえることはない


「あの……」


沈黙に耐えかねて僕が声を出すと、ガチャン、と勢いよく受話器を置いた音がした

僕の顔からサー、と血の気が引いていく


どうしよう
今出たの、どっちだったんだろう

どっちにしても、怒ってる……よね


どうしよう
どうしよう


とにかく謝らなければ、ともう一度インターフォンを押そうとしたその時


「!!!」


扉が勢いよく開いて、中から出てきた人に体当たりされた

何とか身体を後ろに反らすだけで耐え見てみると、体当たりしてきたその人物は千秋さんだった


「千秋さん……?あの、」
「……」


謝罪の言葉を並べようとすると、それを遮るように腕に力を入れて抱き締められる

その行為に目頭が熱くなった


ごめんなさい、千秋さん
もう2度と貴方を裏切るようなことはしません
どんなことがあっても


僕は必死で涙を堪えながら、目の前にある愛しい熱を抱きしめた


「千秋さん……ありがとうございます……」
「……」


千秋さんが僕の腕の中で小さく首を振って、僕の着ていた服に涙の染みをつけた

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