
言葉で聞かせて
第13章 言葉で聞かせて
玄関先でそんなことをしているのには流石に抵抗があって、暫くすると僕は千秋さんから離れて
「中に入ってもいいですか?」
と尋ねた
未だに目から大粒の涙を流す千秋さんは、少し躊躇ったようだけど小さく頷いてくれる
家の中に入ると、外で冷えた身体を温かい空気が迎えてくれた
安心感からほっと息をついたけれど、家の中にはどこか違和感がある
「?」
なんだろう
……あぁ、敦史がいないんだ
そう思いついた僕は僕の後ろからついて歩いていた千秋さんを振り返って尋ねる
「千秋さん、敦史はどこにいったんで…….」
振り返ってみて驚いた
「千秋さん?足、どうかされたんですか?」
千秋さんは何処かを庇うようにひょこひょこと跳ねながら歩いていた
千秋さんは大丈夫、と首を横に振るけれど、全くそんな風には見えない
走らせたりするなんて最低だ
とにかく早く座らせて診てみないと
「千秋さん、失礼します」
「!!!」
「えっ……」
僕が千秋さんを所謂お姫様抱っこの形でリビングに運ぼうとすると、千秋さんが思いっきり顔を顰めた
痛いのは、足じゃない?
どういうこと?
