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言葉で聞かせて

第13章 言葉で聞かせて


『違うんです』


と走り書きした千秋さんは激しく首を横に振る


『違くて』


と更に書き出したけれど、千秋さんの手はまた止まってしまった


「千秋さん……」


僕は千秋さんの隣に座って、腰が痛まないように優しく千秋さんを抱き寄せる


「もしも僕を許してくださるなら、全て話して下さい。……僕はもう決して、貴方を裏切るようなことはしません」


言葉がちゃんと千秋さんに届いて
身体の外側から内側に染み込むように語りかける



「だから、僕にもう一度千秋さんの傍にいて、支える権利を下さい」


千秋さんの顔を引き寄せた肩がじんわりと濡れる感触がした
抱いた肩が僅かに震えている

千秋さんは、静かに泣いていた


焦ってはいけない、と自分に言い聞かせて、僕は千秋さんが落ち着くのをひたすら待つ


「!」


トン、と肩を軽く叩かれて視線を落とすと、目の周りを赤く染めた千秋さんが痛々しげに微笑んでいた

傷んだ心を隠して、僕も微笑み返す


敦史は今どうしてるかな


事情も、僕がいない間千秋さんがどう過ごしていたかも、何もかも知っているであろう敦史が羨ましくなった

けれどそれと同時に敦史と会いたいという気持ちも高まった

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