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言葉で聞かせて

第13章 言葉で聞かせて


電話も通じなくて、行き先の見当もついていない
そんな状況なのに悠史さんはどこか楽しそうだった


どうしてだろう?


『どうしてそんなに楽しそうにしているんですか?』


と思わず聞いてみると、悠史さんがにっこりと笑顔を僕に向ける


「だって、愉快じゃないですか。いつもあんなに粋がっていて俺様な敦史が千秋さんに構ってもらえないからって落ち込んでるんですよ?」
「!」


そんな言い方されると確かに


敦史さん可愛い


って思っちゃうな

でも、そっか
考え方次第だよね

良い方に考えなきゃ
悪い方へと考えてしまうのは僕の悪い癖だな


可愛らしく涙目になって、部屋の隅で震えている敦史さんを想像して笑いを漏らす

もちろん声は出なかったけれど、息の漏れ方で笑ってるって悠史さんにも伝わってくれたみたい


あぁ……でもなんだか声、すぐに戻るような気がしてきた


「ふふふ、千秋さんも笑ってるじゃないですか」
『敦史さん、可愛いです。早く見つけてあげなくちゃ可哀想ですね』
「えぇ、早く見つけてしまいましょう。とりあえず僕が思い当たるところを回ってみましょうか。この流れだと女性のところに逃げ込んでいるなんてことはないでしょうし」


僕は頷いて、悠史さんに手を貸してもらいながら立ち上がった

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