
言葉で聞かせて
第13章 言葉で聞かせて
あっ……そっか
普通人と話すのに鞄漁ったりしないよね
失礼だったかな
そう思って鞄から手を出そうとすると、佐伯さんが慌てて「あぁ、ごめんごめん。違うんだ」と言った
「声、また出なくなっちゃったの?」
「!」
僕が失声症だったこと知ってるんだ
どうして
僕の驚きが顔に出ていたのか、隣の悠史さんが穏やかな口調で説明してくれる
「こちらのお2人は、千秋さんの元恋人とのことがあってからずっと千秋さんのことを気遣ってくれていたんです」
真菜さんとのこと……
ずっと前のことだ
そんな、顔も知らないのに
僕がお礼の意味を込めて頭をさげると、佐伯さんはヘラ、と笑い三崎さんはバツの悪そうな顔をした
「俺たちは特に何もしてやれてない。礼を言われる立場じゃない」
三崎さんはそう言ってくれるけど、そんなことない
こんなに優しい人が敦史さんや悠史さんの側にいてくれることが心強いんだ
急いで取り出したメモ帳にそう書いて告げると、三崎さんにも佐伯さんにされたように頭を撫でられた
「悠史ちゃんちょっと、うちのママがすんごいデレてるんだけど」
「本当ですね。三崎さんあんな顔もするんですか」
「いやん、ジェラシー……」
「外野うるせぇぞ」
