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言葉で聞かせて

第13章 言葉で聞かせて


「でも流石に、ここにはいませんね……」


残念そうな顔でこうえんを見渡す悠史さんに倣って僕も公園内を見渡してみるけど、公園には遊んでいる子供が数人いるだけで大人と呼べる年齢の人がいない


うぅ、残念……
どこに行ってしまったんだろう


僕が眉を下げると、悠史さんが悪戯っ子のような顔で「あ、そうだ」と声を出した


「?」
「良いものがあるので、ついでに見ていきましょうか」


そう言った悠史さんが僕の手を引いて連れて行ったのは公園のドーム型の遊具
中が空洞になっていて、小さな穴から入ることが出来る


「頭気をつけて下さい」


わわ、公園の遊具なんて入るの久しぶりだなぁ
小学生ぶり?かもしれない

こんなに小さいんだ


穴から入って突き当たった壁の、二歩右にそれた下
悠史さんが指差すところを覗くと幼い崩れた字で


『せかいせいふく』


の文字


せかいせいふく……世界征服?
これって


「敦史が小学生の頃に書いたんです。彫刻刀でガリガリ書いたから、消えないほど濃く残ってしまって……」


「お馬鹿ですよね」と笑う悠史さんの顔が優しい


確かに、お馬鹿さん
だけどすごく可愛い


僕が笑っていると、それに気がついた悠史さんも笑う

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