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言葉で聞かせて

第13章 言葉で聞かせて


ポケットからハンカチを取り出して渡してくれた悠史さんが、悲しそうな顔をしているのが見えた


あっ……
悲しいのは、僕だけじゃないんだ


そう思っていると悠史さんが躊躇いがちに口を開く


「やっぱり千秋さんは僕よりあーーーー……っ」


言葉を途中で遮ったのは、悠史さんの携帯の着信音

気まずそうに口を噤んだ悠史さんは続きを紡ぐことなく電話に出てしまって、何を伝えたかったのか僕にはわからないままになってしまった


何て言いたかったんだろう
僕より?


電話で話す悠史さんを眺めていると、突然声を上げた


「えっ本当ですか!?ーーはい。わかりました。ーーありがとうございました」


そして悠史さんは電話を切るなり僕に向き直って


「敦史の居場所がわかりました」


と告げた


「少しここから遠いので、タクシーで移動しましょう」
『敦史さん、移動してしまったりしないでしょうか』
「大丈夫ですよ。見つかったのは恐らく目的の場所に行く道中でしょうから。僕たちが直で向かえばきっと間に合います」


自信たっぷりに言う悠史さんだけど、その目はまだ少し悲しげに見える


「それにしてもどうしてそんなところに……」


小さく呟いた悠史さんの言葉が、僕の耳に残った

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