テキストサイズ

言葉で聞かせて

第13章 言葉で聞かせて

敦史目線


何も持たずに家を出て、一晩中歩き続けた


頭いってぇ
油断したら……あぁ、クソやめろ


熱くなってきた目頭に意識を持って行かれないように歩く

ワックスも何もつけてない髪が俯くと顔にかかって、他から見えなくなるのが唯一の救いだ


「ねぇ、何してんの?家帰れない感じ?ウチ来る?」
「……話しかけんな」


こんな明らかにヤバい奴によく声かけれんな

前の俺だったら多少相手にしてやったかもしれねぇけど、今は鬱陶しくてしょうがない

それでも尚食いついてくる女に舌打ちをお見舞いしてやれば、恐怖に肩を揺らした女はそそくさと去って行った


今の女で何人目だ
うぜぇ


よく考えてみればいるのは人通りも多い路地
そりゃ声かけてくる奴ぐらいいるだろ

と、そこまで考えて気がついた

自然と身体が向かっていたのは俺のトラウマとも言える路地裏


クソ
俺、変わってねぇな
あの頃から、全く


人傷つけて、自分も傷ついて
馬鹿みてぇだ


俺は路地裏に着く前に踵を返した


どこに行こうか、とちゃんと考えてみると思い浮かぶのは悠史に迷惑をかけた場所ばかりで、悠史が探したらすぐに見つかりそうだと1人笑った

ストーリーメニュー

TOPTOPへ