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言葉で聞かせて

第13章 言葉で聞かせて


誰も通らないような細い路地で俺は1人フェンスに背を預けて座り込んだ

立てた膝に腕を置いて、そこに突っ伏す


疲れたな
家からここまで、って結構あったし


「はぁ……」


震える声で溜息を付くと、昼の暖かい日差しが遮られて影が差した


「?」


なんだ?


と顔を上げると、そこには俺の目の前に仁王立ちして腕を組む悠史と、その横で心配そうに俺を見つめる千秋の姿があった


「!」
「本当にこんなところにいたんだ」


苛立ちと呆れを含んだ悠史の声はちゃんと俺に届いているが、エリカはどうした、とか色んなことが浮かんできて反応できない


「……」


すると俺が無言でいる理由に気がついたらしい悠史がため息混じりに説明してくれた


「三崎さんが助けに来てくれたんだよ」
「そう、か……」


俺の気の無い返事に、悠史は眉を上げる


「千秋さんに心配かけて、何してんの。僕だって敦史が色々してくれたことのお礼を言いたいのに、いないんじゃ意味ないでしょう? 何でいじけてるのか知らないけど、帰るよ」


悠史が俺に手を差し出した

その手を借りて立て、という意味だろう


「……」
「敦史?」


だが俺はその手を取らない

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