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言葉で聞かせて

第13章 言葉で聞かせて


悠史の意外そうな声が頭上から降ってくる


俺には、その手を取る資格なんてねぇ

だって千秋のその目は
きっと心配じゃなくて、俺に対する恐れだろう?


「帰れねぇ」


帰れる場所は、また自分の手で壊してしまった


俺は顔を上げた
目線の先には千秋


「悠史に言ったか?」


俺が聞くと、千秋は首を横に振った


「何を?僕に言ってないことがあるの?」
「あぁ……俺が家を出て、こんなところにいる理由だよ」
「それは……」


言い淀んだ悠史は、本当に理由を知らないみたいだ


「はははっ」


俺の口から乾いた笑いが漏れる


何でだよ
俺を庇ってんのか?

やめてくれ

惚れた奴を無理やり抱いて、そいつに同情されるとか
惨めすぎる


「悠史に言えば良かっただろ、千秋。そしたら大好きな悠史に慰めてもらってハッピーエンドだったのによ」
「敦史?」


自分の口から出たはずの言葉が何故か自分に牙をむいて、胸に刺さるみたいだ


「俺なんか切り捨てて、好きな奴と2人で生きていけよ。迎えになんか来るな。あんな酷いことした俺なんかに構うなよ」


ちゃんと悠史は返してやったろ
だからもういっそ俺を

消してくれ

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