テキストサイズ

言葉で聞かせて

第13章 言葉で聞かせて

悠史目線


敦史の居場所を教えてくれたのは佐伯さんだった


『お客さんからタレコミがあったよ。ボロボロの格好で歩いてたって』


そう言って告げられた場所は、かつての僕達の通学路だった

高校へと向かうその道を僕達は普段ほとんど使うことはなく、通学以外での記憶は乏しい


じゃあ敦史は高校へ行ったの?
どうして……


半信半疑のまま、僕は千秋さんを連れ添ってタクシーに乗り込んだ


到着した高校は記憶にあるままで、とても懐かしく思える

敦史はどこにいるんだろう、学校の中にはいないよね?と周囲を歩いていると体育館のフェンスに寄りかかる敦史を見つけた


本当にこんなところにいた
どうして

だって敦史がいるそこは


敦史を守りたくて、守れなかった場所だ


あの時の僕は敦史に前みたいに戻って欲しくて必死だった

射抜くような目が怖くて
怪我をして帰ってくるのが心配で
冷たくされるのが悲しくて

色んな感情を抱えながら、僕なりの精一杯で敦史を守ろうとした

結局は、何も出来なかったけどね
敦史を変えたのは結局は敦史自身だった


だから僕にとってはここは、嫌な場所で
なのに


「本当にこんなところにいたんだ」



そして続いた自暴自棄な敦史の言葉に、胸が詰まる


千秋さんが好きなのは敦史なのに
なんでそんなこと言うの

本当は僕に離れていって欲しいんじゃないの?


ねぇ敦史

僕達はお互いの関係に
この恋に

どうやって決着をつけようか?

ストーリーメニュー

TOPTOPへ