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言葉で聞かせて

第13章 言葉で聞かせて

千秋目線


悠史さんが僕じゃなくて女性の方を選んだと知った時、半身を失ったような感覚だった

バランスが上手く取れなくて
笑った顔も、どこか歪で

生きている感じがしなかった

悠史さんが帰ってくると知った僕はようやく元に戻れると喜んだのに、今度は敦史さんが僕の元から去ってしまった


また、半分いなくなった


悠史さんが僕の半分で
敦史さんが僕のもう半分

僕の身体に僕の部分はなくて
2人がいるから僕でいられる


今回のこの一連の出来事でわかったこと



それを、どうにか伝えたい

貴方がいないと
貴方じゃないと
ダメなんだって

そばにいて欲しい


声出て……!!!
もう、今のこの気持ちが伝えられたら2度と声が出なくなっても構わないから……!!!!!


自らの美しい声と引き換えに脚を手に入れて、王子様にひとめだけでもと会いに行った人魚姫の姿が頭に浮かぶ

僕の声は美しくなんかないけど

でも、気持ちは一緒


死んだって構わない
泡になってしまったって、構わない


流れる涙に、額に浮かぶ脂汗


そして次の瞬間

僕の喉が、空気を震わせて
声が言葉となって口から出て行った



「ど、……にも、行かな、で下さい!!!!」

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