テキストサイズ

missing☆ring【完】

第5章 1年前。

暖かい車を降りて、人混みの中を陸と一緒に境内へと歩く。
寒くて身が縮む。
目の前の陸は高い背を少し丸めて歩いている。



なんだか、懐かしいこの感じ。
陸と一緒に行った夏祭りを思い出す。



人混みの中、陸から離れないように必死だった。
途中から繋いだ手から熱が顔に伝わった。



不意に陸が振り向き「夏祭り思い出すな」と笑った。
そして私の手を握り



「あの時みたいに、誰かに転ぶ前にね」



また私の心を奪う。



陸のくるっとまるまって居る襟足が懐かしい。
今居るのは、
今私の手を引いて歩いているのは、本物の陸。



ギュギュと人に揉まれ陸との距離がまた近くなる。



「裕実、大丈夫か?」


「ん、あんまり大丈夫じゃないかも」


「裕実はちっちゃいからな」



陸はクスッと笑って一層強く私の手を握った。


ストーリーメニュー

TOPTOPへ