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missing☆ring【完】

第5章 1年前。

時折空気を求めて離れる唇から「陸」と何度も呼んだ。



この温もりは陸のものだと、
これは現実なんだと、
何度も、何度も名前を呼んだ。



車内が温かくなった頃に、漸く陸の唇が私から離れた。



私はただ妖艶に光る陸の唇を見つめた。
まだ夢を見ているようだった。



もう一度「陸」と名前を呼ぶと、ゆっくりと陸が私を見つめる。



私はその陸の瞳を見つめ返すだけで何も言えなかった。
一度塞がれた言葉は、やっぱり私は陸に伝えちゃいけない。



陸の瞳が私に伝えてくる。



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