
いつか手をつないで歩こう
第5章 告白
12月に入り、会社のロビーにも大きなクリスマスツリーが飾られていた。
朝。エレベーターの前には、出勤してきた社員達でいっぱいだ。
ドアが開き、押されるように私は奥へと追いやられた。
すると横から
「おはよう」
と声が聞こえ、見上げると前野さんが笑顔で私を見ていた。
「お、おはようございます」
前野さんと初めて言葉を交わす…。やはり、うわさどおりの素敵な人だ。
「この前、ショッピングモールで君を見かけたよ」
「え、前野さんもあそこにいたんですか?」
「うん。妹の出産祝いを買いにね」
「そうだったんですね」
「一緒にいた人は、彼氏かな?」
…彼氏?
私は一瞬びっくりした。
「いえ、弟ですけど」
「あっ、そうだったんだ」
チン!
エレベーターのドアが開いた。
「では失礼します」
私は前野さんに軽く会釈し、数人に混じって降りた。
