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いつか手をつないで歩こう

第11章 雨


「…ただいま」


私は力なく家にたどり着いた。
すぐに浩輔が顔を出すが…。


「おかえり…って!ずぶ濡れじゃんっ。傘は持って行かなかったのか?」

「持ってたけど…」

「姉貴風呂へ入れよ。このままじゃ風邪ひいちまうぞっ」


そう言って浩輔は私をお風呂場へ追いやろうとしたが、私は動かずに浩輔を睨んだ。

「な、なに?」


「グスッ…うっ」

「…どうしたんだ姉貴」

「わからないの?私がどうして泣いてるのかっ」


「…もしかして聞いたんだ。叔母さんに」


「ばか!浩輔のばかっ!あんな約束を叔母さんとするなんて…」

ふら…っ

「っ」

めまいでくずれ落ちそうになる私を、浩輔が抱きとめた。


「俺だって…俺だっていやに決まってるだろ!姉貴と離れて暮らすなんて。
でも仕方ないんだ…。いつかは姉貴だってちゃんといい男と出会って…結婚しなきゃならないんだ。わかるよな」

浩輔が言い終わらないうちに

「…っ」

私はその口を自分の口で塞いでいた。

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