恋愛妄想短編集【完】
第2章 偶然と必然 [完]
そのときーー
「サクラさーん!!」
近くから大声で呼ばれた自分の名前に、ビクッと体を震わせた。
「サクラさん!どこですかー!?」
尚も名前を呼び続ける女性は、最近入ったばかりのパートの方。
何かわからないことでもあったのだろう。
と、そんな呑気なことを考えている場合ではなかった。
「あっ、あの!すみません、服をっ!」
彼にも聞こえないはずが無いパートの女性の声に、流石にと思ったのか、乱された服を元に戻してくれた。
「サクラさーん!!ダブルアップのマクラ足りないんですけど、どこにあるか教えてください!」
「いっ、今行きます!」
私は立ち上がると、彼女の元へと急ごうとした。
そんな私に、彼は近くにあったメモとペンを取り出し、そこに連絡先とメッセージを記して私に渡した。
「中途半端にしてしまって…体、疼いているでしょう」
そう言われてしまえば、そのメモを取らずにはいられなかった。
またあの感覚が味わえるのだと、彼との関係が途絶えないことに喜びを感じている自分が嫌でもわかる。
メモをポケットにしまい、彼に少し微笑みかけ、私は部屋を後にした。
ーー夕方仕事が終わり、そこで初めてメモをじっくりと見た。
「サクラさん、私が今日この部屋になったことは偶然でも、私とあなたがこうして関わりを持ったことは必然です」
「その偶然と必然を大事にしたい。」
「あなたも、そう思ってくれますか?」
読んだ時、私は気付けば携帯を手にし、メモられた番号に電話をかけていた。
「はい」
それから数コールで出た彼に、
「好きです、私も大事にしたい」
そう言っていた。