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恋愛妄想短編集【完】

第3章 涙の虜 [完]









「明日、レイがちっちゃい頃仲良かったソウ君がこっちに越してくるらしいのよ」










…は?


ソ…ウ君?










昔の記憶が蘇る。









その名前を聞いていい思い出なんて今更見つからない。










悪魔が…帰ってくる。












「えっなんでいきなり!?」






少し興奮気味に話すと、お母さんは意味がわからないというような顔をしつつ返してきた。








「昔ちょっとここから遠いところに引っ越したじゃない?そこからだとソウ君の新しい会社から遠いらしくて、ソウ君こっちで1人暮らしするらしいわ」













最悪だ…





引っ越して行った時はやっと解放されたと思った。





これで楽しく過ごせるって。







なのに、また…






顔には出さないものの、ものすごく落ち込んでいた。





怯えてもいたと思う。












「ソウ君、どうなってるかしらね〜。すっごい変わっちゃってるかもしれないわよ」






お母さんのその言葉に、はっとした。






あ…そっか。



さすがにあの頃よりも大人になっているはずだよね?



たしか今年で27だもん。





世間で言ったらもうすぐおじさんになってもおかしくないじゃないか。






むしろ頼れるお兄さんとかになっているかもしれない。






はたまた彼女なんかできちゃってて、昔の面影なんかなくなって、丸くなってるかも。







強引だけれどなくはない妄想を膨らませ、私の気分は落ちていたところから回復してきた。








「わかった、とりあえずバイト行ってくるから」





「あ、もうこんな時間なのね。いってらっしゃい」







お母さんと悪魔の話をしていたばっかりに予定が狂ってしまった。





私はスニーカーを履いてコンビニへ向かった。








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