恋愛妄想短編集【完】
第1章 近すぎた想い [完]
「なによ?」
意味の分からない行動を不審に思いながらも、ゆっくりと近付く。
そして、私がタケルの隣に着くとすぐ口を開いた。
「俺が誰を好きなのか、教えてやろーか?」
正直そこまで興味はない。
タケルが誰を好きであろうと関係ないけれど、からかうネタにはいいかもしれない。
意地悪く笑いながらの言葉に、私は短く「誰?」と答えた。
「んじゃ、あっためろ」
「は?なに意味わかんないこと言ってんの?さっさと教えてよ」
意味のわからない交換条件。
こいつの言動にはいつも振り回されていたが、どうやら今日も振り回されるらしい。
「だからクーラー消すかってさっきから言ってんのに」
「消したらまた暑くなんだろーが、それなら寒い方がマシだ」
だったら我慢してくれ…。
そんな風に思いつつ、タオルケットでも取りに行こうかと腰を上げた。
はずだった。
なんでか?
それは腰を上げることを、隣にいた我儘野郎に腰に腕を回され阻止されたためだ。
「あのさー…さむいんでしょ?かけるもの持って来るから」
そう言ってまた立ち上がろうと力を入れる。