
泣いて、笑って、恋をした。
第2章 act1
「……母親」
私はスーっと瞳をふせるように自分の足元に落とした。
「そっ、」
聞いて来たのに素っ気ない返事に少し苛立つ。
興味がないなら聞かなければ良いのに、
カチャカチャと小さく音が聞こえ、彼が私に近付いて来る。
俯いた私の足元に彼の靴の先が見えた。
「腕出せ」
「……」
「早く出せ」
私は自分の腕を後ろに回し彼の言葉を拒否するように何も言わなかった。
チィッと舌打ちが聞こえ「気が長い方じゃねーんだよ」と言われ私の腕を力強く引いた。
「うわっ」と前のめりなるように彼との距離が縮まる。
