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第13章 風は追い風

ニ『はい』

「おう、二宮。大丈夫か?」

ニ『うん…まあ、何とか…』

電話越しの声は暗かった。
大丈夫かな…。

「俺も帰ろうか?」

ニ『ううん、大丈夫。少し…一人になりたいから…』

「え?」

ニ『ごめんなさい。少し一人にしてください…』

「俺、早めに帰るよ。」

ニ『いつも通りでいいよ、ご飯はちゃんと用意しとくから…』

か細い声だった。
そして、辛そうだった。

朝は、そこまで具合悪そうじゃなかったのに。

「二宮」

ニ『はい…』

「寂しくなったら、いつでも電話しろ」

ニ『……』

「なんなら、会いに来ていいぞ」

ニ『…そんな元気ないよ』

ふふって笑った。
その笑い声だけで安心できた。

「とりあえず、ゆっくり休め」

ニ『うん、じゃまたね』

「おう、またな」

電話が切れる。

よかった。
電話で少しは、元気になってくれた。

始めはあんなに暗い声だったのに、
電話を切る前には、笑ってくれた。

「ふぅ…よかった」

オフィスに戻ろうと、振り返る。

「うおっ!」

松「クソガキかと思ったら彼女?」

得意のにやけ顔で聞いてきた。

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