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第13章 風は追い風

翔のこんな姿、初めて見たから少し戸惑った。

櫻「ちょっと電話してくる」

翔は、携帯片手に立ち上がってオフィスを出ていった。

そんな翔の背中をみてため息をついた。

どうして、ため息をついたのかは自分でもしっかり分かってる。
だけど、気づかないように自分をコントロールしてる。

気づいたら、自分がどうなるか分かってるから。

きっと、彼女がいるって分かってても
翔を押し倒す。

無理にでも、犯す。

そんな、自分がずっと嫌いだった。

今までそんなことばっかり、してきたから。

翔にだけは、そんな思いさせたくない。

だから……

“会社の同僚”ってことでいい。

それだけで、満足する。

「はぁ……」

会社にいても、何もすることがない俺はただただ椅子に座ってため息ばかりついていたんだ。


櫻「潤、帰んないの?」

いつの間にか戻って来ていた翔に声をかけられる。

「ん?今帰るわ」

櫻「そ。気を付けてな」

「んじゃ、お疲れ」

櫻「おー、また明日な」

疲れた顔で微笑む翔を、
好きになったなんて言えない。

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