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第15章 今、思いのままに

─────

「智」

返事をしないで、振り返った。

「俺、寂しい」

口から、出た。
涙も出そうだった。

だから、唇を噛んで我慢した。

泣かないように。

大「和也、寂しくないよ」

俺の隣に立って、そっと手を握った。

大「俺がずっと傍にいる」

にこっと笑って、智より少し背の高い俺の頭を撫でた。

大「ね?だから、泣かないで?」

「無理っ!」

寂しさは、多少軽くなった。
この時は、まだ知らなかった。

高校まで、傍にいてくれるなんて。

大「にしても、暑いね」

季節は夏。
蝉の声が煩くて耳を塞ぎたくなる。

けど、塞がないのは蝉の声が心地いいからなんだと思う。

「俺ん家で、アイス食べようぜ」

大「いいの?ヤッター!」

大通りを二人で歩く。
手をしっかりと握って。

─ポンポン…

不意に、公園からボールが跳んできた。

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