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第3章 季節の中に

(櫻井side)

ニ「さくら…い…さ、ん…」

見開いた目から、一筋の涙が流れた。

ニ「み、見ないでっ…」

脱いだ服を手に取ろうと、
洗濯機に手を伸ばした。

その手を、俺は掴んだ。

ニ「離して!」

「二宮…どうした…この傷……」

上半身のあちこちに、
紅い傷がついていて、更には青白いアザまで残っていた。

ニ「離して…離して、ください…」

表情を歪ませて、流れる涙が痛々しい傷の上に何粒も落ちた。

俺は、そのまま動けなかった。

理由は、全くわからない。
なんで、この腕を掴んでいるのかもわからない。

けど、けど……

なんか放っとけねぇんだよ。

理由なんてものはない。

『なんで?』

と、聞かれて答えられる自信なんて
これっぽっちもない。

ニ「離して……」

泣き叫んでた二宮の声もだんだんと威勢がなくなって、声まで掠れてた。

「二宮」

ニ「……」

なんの言葉も発しず、俺に顔も向けなかった。

「俺は、何も聞かないし何も言わない」

それが、現段階での良策だと思った。

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