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チェックメイト

第1章 明日はかならず

喫茶店、グリーンハウス。

長いこと、通っていた。
俺が仕事を始めた頃からだから…
もう5年ぐらいかな。

うわ、5年も通っていたのか。

考えてみると、凄いことだな。

弟「お兄さん!」

俺のことを『お兄さん』と呼ぶのはアイツしかいない。

足を止めて、振り返る。

「おー、弟。どうした?」

てか、俺がお前の名前知らないのとかアンフェアだろ。

弟「お兄さん、櫻井翔っていうの?」

息を切らして、問いかけてきた。

走ってきたのか。

てか、なんで?

「うん、櫻井翔だけど…」

弟「はぁ…やっと会えた」

「はぁ?」

弟「俺のこと、覚えてない?」

「覚えてるもなにも…初対面だろ」

スパッと切り捨てるように言った。

弟「覚えてないんだ…」

悲しそうに、頷いた。
そんな原弟が可哀想で、ついつい頭を撫でてしまう。

ぽんぽん。

「なんか分かんないけど…ごめ」

弟「許さないからね」

「は?」

許さない?
え、どういうこと?

え?なんで?

ただ、単純にそう思った。

弟「絶対に、許さないから」

上目遣いで睨んできた。

「なんの話だよ」

弟「名前」

「あ?」

弟「俺の名前」

紙をポケットから取り出して、俺に渡した。

二宮和也。

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