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ドラクエ短編集(クリアリ)

第2章 今だけは…

アリーナ様の目から一筋の涙がこぼれ落ちる。

「あたし…いつも、クリフトに甘えてばかり…」

「そんな…」

「ワガママばかり言って、クリフトのこと、振り回してきたよね…」

振り回されたことは、確かに否定はできないが、それを嫌だと思った事は1回もない。

「アリーナ様、『大丈夫』です。私はそのためにアリーナ様のお側にいるのですよ」

「クリフト……」

「このクリフトでよければ、どうぞ甘えて下さい。振り回して下さい。あなたがあなたらしく振る舞える、それだけで充分です」

「クリフト……」

…ああ。
そんな顔をしないで下さい。
そんな顔をされたら…





今だけ。

今だけは、許してくださいますか?





「アリーナ様…あなたの涙は私が受け止めます。だから…」

私は胸元にしがみつくようにしているアリーナ様にそっと腕を回してぎゅっと抱き締めた。

「!!」

「今は、思いきり泣いてください…」

ぎゅっと力が入っていたアリーナ様の体からふっと力が抜け、その肩が小さく震え出す。
やがて、小さい嗚咽が聞こえ始め、それが徐々に大きくなる。

「アリーナ様……」

背中をぽんぽんと優しく撫でてやると、アリーナ様はまるで子供のように声をあげて泣き出した。


私はそんな彼女の背中を軽く撫でながら、何があっても、この命に変えてでも、この女(ひと)を守り抜こうと強く心に誓ったのだった。

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