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クリフトは深呼吸をして心を鎮めてから、アリーナの熱く潤んだ瞳を見つめて言った。



「こんなふうに成り行きで、ではなく、ちゃんと一からあなたを愛したい……」



真剣な眼差しに、アリーナは動けなくなる。

「劣情のままに今ここであなたを自分のものにすることは簡単です。でも……」

クリフトの大きな手がアリーナの髪を優しく撫でた。

「私は、あなたを大切にしたい」

アリーナは、クリフトの触れているところから、じんわりと暖かい何かが広がっていくような感覚を覚えた。

体の欲望に高ぶっていた心がゆっくりと落ち着いていく。

心が落ち着いてくると、クリフトにやや迫るような態度を取ってしまった自分が恥ずかしくなってきた。

「クリフト…そんなふうに思ってくれて…ありがとう…」

アリーナから妖艶な気配が消えたのを感じて、クリフトがふっと苦笑する。

「…本当は今この瞬間もあなたをベッドに押し倒したい気持ちでいっぱいなんですけどね」

「！！」

耳まで真っ赤になったアリーナに、いたずらっぽい笑顔を浮かべたクリフトがこっそり囁く。



「…あなたを隅々までじっくり愛させて下さいね……近いうちに……」





この日からしばらく、旅の最中に顔を赤くしたり急に狼狽えたりするアリーナが見られ、勇者たちは悪い病気にかかったのではと心配もしたのだが、その本当の理由はクリフトしか知らないのだった。