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サランの町外れ、確かに怪しげな小さな建物がある。遅い時間のせいで周囲に人気はない。ただ、その建物の中には人がいるらしく、明るい話し声が漏れている。何だかいい匂いもただよってくる。ここがバーなのは間違いなさそうだ。

アリーナは大きく深呼吸をした後、店の扉をそっと開けた。



カラン、と扉につけられたベルが柔らかい音をたてた。

瞬間、店の中に緊張がはしった気がした。
店内には、カウンターの中にマスターらしき男が１人、カウンターに２人、テーブルに３人の計６人の男たちがいた。

「いらっしゃい、可憐なお嬢さん」

人のよさそうなマスターが笑顔で声をかけてくる。

「こりゃべっぴんさんだなぁ。お嬢ちゃん、この店は初めてかい？」

カウンターに座っている、少し赤ら顔の男も声をあげる。

アリーナが一瞬躊躇すると、カウンターのもう１人の男が言った。

「ロッソさんに声かけられたらびっくりして逃げ出したくなっちまうよなぁ」

その言葉に、マスターを含めロッソと呼ばれた男以外が笑う。

「何だよ、みんなひでぇなぁ…」

照れ臭そうにぽりぽりと頭を掻くロッソは、ただ酔っているだけでそう悪い人物でもなさそうだ。

このバーのどこがそんなに怪しいのだろう…とアリーナは不思議に思いつつ、もう少し捜査をしてみることにした。