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雪の日の空に

第8章 愛した人は…

佐月さんは、私の涙が止まった後もそのまま抱きしめてくれていた。

壊れ物を扱う様に回されたその腕。

塩沢さんから話を聞く前の私ならただ嬉しくてその腕の中にずっと居たいと思えたかも知れない。

でも今は、"ゆきさん"と私を重ねて、その償いの気持ちで私を抱きしめていると思ってしまう。

その時ふと思った。

事故で失った命。

誰の責任でもなく、誰を攻めるとかそんな問題ではないと。

なぜ佐月さんと彼女は別れてしまったのか。

佐月さんは今でも彼女を想い、忘れられずにいる。

私と彼女を重ねる程に。

私が彼女なら、そんな辛い事があったら、側にいて欲しいと、思うのはその子の父親である佐月さんだ。

その後すぐに佐月さんがその出来事に責任を感じていたのなら、事が起こる前よりももっと強い絆で結ばれていてもおかしくないはずだ。

だって彼女は佐月さんが忙しくて会えなかった間、寂しかったはずだから。

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