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雪の日の空に

第8章 愛した人は…

私は彼女の事は知らない。

だから彼女の気持ちは分からない。

でも、佐月さんの心は彼女を忘れられずに取り残されたままなのだから。

それだけ、愛し愛される関係だったと思える。

ゆきさん…、あなたはどうして佐月さんの側を離れたの?

新しい生活をしているのなら、あなたの手で佐月さんを救って欲しい。

私に出来ることは、何もない。

それが出来るのは、ゆきさんだけだ。

佐月さんの背中に手を回したまま、その手でギュっと佐月さんの服を握りしめた。

「ゆき?もう平気なの?」

私の顔を覗き込もうと、佐月さんの体が少し離れた。

佐月さんの服が私の涙で濡れている。

「すみません…汚してしまって…。」

「そんなの気にしない。俺は女の子が泣く姿は見たくないんだ。だから隠しただけ。悲しい顔をされるくらいならなんでもするよ。」

"女の子"

そのひとくくりが、また切なさを倍増させる。

彼女も佐月さんの前で泣いたのだろうか…

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