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雪の日の空に

第3章 似た顔

緊張で体が強張るのが分かる。

塩沢さんの体がスッと離れ、一気に安堵する。

しばらくして私の前にコーヒーの入ったカップが置かれた。

「乾燥機、終わるまでゆっくりしてろ。」

そう言うと、私から離れた所に座った。

「あの…、ありがとうございます。」

そっと顔をあげると、塩沢さんが微かに笑ったのがわかった。

ちょっと強引だけど、全て私の為にしてくれた事。

少し苦手だけど、優しい人なんだ。

「永橋さんは、佐月と知り合いなのか?」

知り合い?

顔見知り?

どれも違う気がする。

橋の上でたまたま名前を呼ばれた事を話すと、腕を組んだまま考え込んでしまった。

ちゃんと話したのも、名前を知ったのも今日が初めて。

あの悲しそうな表情の理由はまだ何も知らない。




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