
エスキス アムール
第11章 デート
「ありがとうございま…」
「……」
嬉しくなって
お礼を言いながら、
大野さんを見ると、
とても切なげな瞳と目があった。
私のスマホについた
ゆらゆらと揺れるストラップ。
「…大野さん…?」
それを見て
彼は悲しげな顔をして
少し、
笑った。
どうして、
そんなに哀しい
顔をしてるの?
大野さんの気持ちが
わからなくて
もどかしかった。
沈黙が続いて
「…はるかちゃんさ、」
大野さんが
ポツリ、口を開く。
ゆらゆらと
揺れる瞳が私を捉える。
胸がギュっと
締め付けられた。
「…はるかちゃんは…
俺のこと…っ」
「波留?波留じゃない?」
大野さんの切なげな声は、
女の人の声で
遮られた。
