
エスキス アムール
第14章 冷たい身体
ここに大野さんがいるのは
シュウの計らいだろう。
もう、
大野さんには会わないって言ったのに。
あったらいけないんだ。
だけど、
久しぶりの大野さんに、
ドキドキしていた。
会ったらだめなのに。
会ったら、大野さんに危険が及ぶのに。
私はやっぱり自分勝手だ。
まだ、いてほしい。
一緒にいたい
そう思ってしまう。
「はるかちゃん…?」
大野さんが、片付けている手を
無意識に掴んでしまった。
ダメだ。
ダメだって、分かっているのに。
驚いて
わたしを見つめる瞳。
「どうした?気分悪い?」
そう言って彼は心配そうに
顔を覗き込む。
『今度波留に会ったら、
全部波留のこと、バラすから。』
その言葉が、蘇った。
私は、
大野さんに
ちがう、違うと、首をふった
好き。
その一言が言えない。
言ったら、いけない。
会う事さえも、
もう、許されない。
三嶋さんが言った通り、
私たちは立場が違いすぎる。
大野さんは、
三嶋さんと居る方が、
幸せに暮らせる。
