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エスキス アムール

第27章 彼とのカスタム





目をつむって、
その手の感触に酔いしれる。
気持ちいい。


あの時、彼女に乾かしてもらった時も
本当に心地よかった。


彼女は今、
どうしているのだろうか。


ちゃんと、
夢に向かって進めているのだろうか。
元気だろうか。

もう一度、
彼女に一目会いたい。

瞼の裏に彼女の面影を
思い浮かべた。

楽しかったあの日々。
それを思い出すと、
必ず、悲しい思い出もセットになって
ついてくる。


あの手紙は燃やしたけど
いつまでたっても忘れることができなかった。



「…はるくん…?」



優しい声が聞こえて
哀しい想い出から
一気に現実に引き戻される。


哀しい時間から救いだしてくれるのは
最近いつも、彼の声だ。


あのバーの時も
ホテルにいた時も。


彼の声で。
彼の言葉で立ち直れた。



瞼を開いて横を見ると、
彼が俺の顔を覗き込んでいた。



「あ…終わった…?
ありがとう」



その言葉に、
彼はううん、といったけど
嬉しそうにニコニコとはせず、



哀しい瞳で笑った。

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